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2016年10月18日 (火)

「Easyrider物語#14 / 広島屋で」

俺は角打ちし乍、けんのことを考えていた。
此処はまぁ、角打ちと言っても、立ち呑みのカウンターがあるわけでもなし、店先に適当にテーブルと椅子を散らしてるようなアレでね。
けれどこのボロ椅子の座り心地が抜群に良い。

家から国立駅までゆっくりあるいて15分。
駅の反対側を真っ直ぐ行くと谷保天神につき当たる。
野暮天さん、いや谷保天さんはでも、学業の神さんなわけで、大学受験真っ最中の息子のお願いに参じた。
財布にあった小銭全部放り込んで。

しかしついそんなことをしてしまったと思った。
此処はメインの神様のほかに、敷地内の雑木林をちょいと上がった処に小さくて地味だけれど、お稲荷様がおわすのね。
少し小銭を取っておけばよかった。こっちではけんのお願いするつもりだったから。

家人のお賽銭に便乗した自分はこころのなかでごにょごにょとお願いの如きを。
神さんの前に行くと、俺はいつだって色鉛筆の箱の中の白、みたいな気分になっちまう。

ところで広島屋は国立へ戻る道すがらにある古い古い団地の中の商店街にある。
酒屋なわけで、店内で買った酒を適当に外で呑んでね、って感じ。適当なつまみ類も色々置いてる。家人は近くの昭和丸出しの肉屋に焼き鳥などを買いに行っていると云う何でもアリのお気に入りの場所。

此処にけんがいたらな、と思う。
きっと向かいにあるパンとかお菓子とか売ってる店やこの店内で、なんだかつまらない菓子みたいなのを皆のためにたくさん買って来て、得意になってるんだろな。
けん、こんなに喰えねーよ、、

そう思ったらなんだか泣けてきた。

60円でちょっといい清酒の試飲が出来る店内に何度も誘ってくれて、かわりにあれやこれやと感想を聞かされるんだろな、、

あぁ、こりゃ駄目だ、涙が止まらないぜ。
家人が戻るまでには止めなくちゃな。
俺は色鉛筆の白になって、じっと堪えなくちゃなんないからな。

もうすぐだ。あと本当にもう少しで、けんは完全に自由な世界へと行ってしまう。
その助走にはしかし恐ろしい程の苦痛がいま伴っていると云う。
もう話を聞くことも、口をきくことも、目を開けることさえもその苦痛の裡に在ると云う。
息をすることさえも!

神さん。
もういいだろ。せめてその苦痛和らげてくれ。そうしてリリースしてあげてくれよ。
恐ろしいほどの自由が果てもなく、前も後ろもなく、上も下もなく、拡がっている場所へと。

其処は寂しくて孤独な場所かも知れない。
だがそう思うのは、この世に在る感覚だろう、想像しても無駄なこと。

白い紙に塗った白色の。
色鉛筆の白。

Iro

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