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2016年7月18日 (月)

ときどきトランス日記 No.75/1000年ハノイで俺は。

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18歳のきみたちへ。

きみたちの年代の約半数が選挙に行きませんでした。
でも19歳、20代、30代のひとたちはもっと行きませんでした。

「そういう重いのはちょっと」
「かったるいし」
「よくわかんねーし、別に興味ねえし」

そういう顔の向こう側に。

きみたちはネット世代のど真ん中だし、今回の参議院選挙の結果次第でマジでヤバいことになりそう、っていうのは匂いで感じていたと思います。大人以上に。

けれど、ホントにヤバいことになったら大人がなんとかしてくれる、そう思っていませんでしたか?

でもそれは無理です。

だってきみたちの頼みの綱、大人たちもこう思っているからです。
「きっと誰かが何とかしてくれるよ」

その「誰か」を選ぶための選挙に大人の半数近くの人たちが行っていません。
関心がないからです。きみたちの半数と一緒ですね。

大人たちはこう言います。
「だってテレビでは何にも言ってなかったし」
「新聞にだって」
彼らにはマスコミがすべてなんです。マスコミの言うことがすべて正しいのです。
テレビが神様なんです。テレビがないと生きていけないのです。

だから国はテレビや新聞に、一切のヤバいことを言わないようにさせました。
だからおとなの半数近くが選挙に行かなかったのです。
「あぁ、いつもの選挙ね。まぁ行かなくても大丈夫だよね」と。

そうして、すでに手遅れになってしまったことにも気付いていません。
だってテレビではそんなことひとつも言っていませんから。

無関心はきみたちと一緒だけれど、その理由は少し違いますね。

これがきみたちの頼みの綱の正体です。
おとなの正体です。

そしてぼくもそのうちのひとりなんです。

ぼくにはもうすぐ18歳になる息子がいます。
ぼくは彼に言いたいのです。
どうか、わたしたちのようなおとなにはならないでください、と。

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アジアの何処の国とも知れぬ古い古い街を、自分と家内は彷徨うていた。
酷い暑さだ。
汗はシャツの分水嶺を遥かに超え、ズボンの腰回りに溜まってゆく。
まったくの、酷い暑さなのだ。

抜けるような青空、ではない。鉛のように輝く蒼空なのだ。
コロニアルだがまるで廃墟のような建物に、絡まるように生えている巨木はしかし、その建物以前から其処に在るのだろう。
見上げる眼にどっと汗が流れ込み、立ちくらむ。

巨木の梢遥か、その遥か上の方から雷(いかづち)の如き大声が降って来る。

「此処は1000年の都ぞ。お前たちは何処へゆくのだ、行き先などないのだぞ」

「では此処が昇龍(タンロン)の都なのですね」

「そうだ。絶望と希望の都ぞ。だがお前は、そのどちらを欲するのか。希望を選ぶのならば、この都から出ることはもう叶わぬ」

「では、絶望を選ぶのならば、、」

「此処から出てゆくがいい、だが言った筈だ、行き先などないと」

天空に在るその声の主は釣り竿を肩にかけた老人で、何処かユーモラスでもあるその貌の向こう側にはしかし、恐ろしいものが漲り宿っている感じがする。

あれは、、
ラヴォン(太公望)だ。
何故自分などのような者に、そのようなことを聞くのかがわからない。
だが、この問答には何か裏があるような気がして来ている。

「いえ、希望が、、」と、もたもたと答えるが、その恐ろしさに竦んだ自分はもうその先が続かない。

兎も角も、酷い暑さなのだ。
思考も視界も、なにもかもが霞んでいる。

自分は両替商で4000円ばかりを胡麻化され、、

その辺りで眼が醒めた。

いや、誤魔化されたのは本当のことだった。昨夜のことだ。
そして1000年の都ハノイで最初の朝を迎えた。

B13

夕べ、少し苦労をして、路上の生ビールにありついた。少しばかりの見当違いで、当たりを付けていたエリアから100メートルもなかったろう。
一杯25円から40円程で飲める店が集まっている。
自分たちは小振りな路上店の小母さんに誘われるままに座り込み、25円也の生ビールを4杯も5杯も飲んだ。
10000円を6000円分のベトナムドンに両替してさ。まったく良い気なもんだ。
自分は莫迦であることは重々承知であるが、旅に出るとわりかし慎重な方なのだ。

なのに。

けど、本当に酷い暑さなんだ。視界も思考も霞むくらいの。
日昼はまだマシなんだ。だが夕方から夜にかけての暑さは、アジアの何処の都市部よりも酷いのさ。本当だぜ。

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ホテルはね、張り込んだ。
夫婦となって25年経ったアニヴァーサリーの旅だったんでね。だから快適このうえない。
たったの3泊の旅。
貧乏だったけれど、時間と未来だけはたっぷりあって、安い長旅をした日々は遠い昔日のこと。

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そして今日は参議院選の投票日。
期日前投票を済ませてきた自分たちは明日、ネットで知ることになる。
運命の日だったんだと。
そのことにこの国が気づくのは、しかしもう少し先のことだろう。
蹂躪されて、血塗れで、そしてようやく知るのだろう。

たくさん飲んだビール、暑さ、社会主義国の空気。

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あぁ、何を食べても美味しい。
ディル、ドクダミ、コリアンダー、ミント、バジル、シソ、何だかわからない葉っぱたち。
何を食べても、香りの強いこれら葉っぱが、がさりと山盛りでついて来る。
汗を流しながら、むしゃむしゃと山羊のように、牛のように、羊のように、料理と一緒に葉っぱを千切っては喰らう。
酒などいらぬ。ただむしゃむしゃと喰らうのだ。
頭の中が、中枢神経が、何もかもが霞んでゆく。

B12B03

夢の分析を濃いベトナム珈琲で流し込む今朝。
そうして。

1000年ハノイで食い倒れる。

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